京急線フォト散歩 三線軌条渡り

今回は、にわか旅鉄おじさんのわたしが京急逗子線の「三線軌条渡り」について語る回です。

まず基礎知識として、日本の鉄道の線路幅は、たいてい標準軌(1435mm幅)または狭軌(1067mm幅)のいずれかを採用しています(京王電鉄など一部例外あり)。ちなみに新幹線や京急は標準軌、JR在来線や東急は狭軌。線路幅には2種類ある、ということを頭に置いて以下をお読みください。

京急の金沢文庫駅と金沢八景駅の間に総合車両製作所(旧東急車両)の鉄道車両工場があって、ここで作られた車両は京急だけでなく全国のJR・私鉄各線に向けて、標準軌・狭軌どちらの車両もここから供給されていきます。

京急の車両は工場に引き込んである標準軌の線路からそのまま京急線内に送り出せますが、JRなどの狭軌用の車両はそのままでは送り出せません。そこで京急線の2本のレールの内側にもう1本レールを敷いた三線軌条にして、必要な区間(工場から金沢八景、六浦を経由し、神武寺の手前でJR線に繋がる”わたり線”に分岐する)だけ狭軌の車両も走れるようにしてあるわけです。

再掲。六浦駅で停車中の車両の足元に見える三線軌条。

京急の車両は左右のレール上を走っていますが、JRの車両が走る時には内側にある狭軌用レールを使うわけですね。

見てわかるように、狭軌用のホーム側レールが京急の標準軌レールよりもホームから少し遠くなるように敷設されています。狭軌用車両が遠い位置を通るようにしてホームとの接触を防いでいるわけですね。

しかし、ここで困った問題があります。上の写真の奥に向かう方向で隣接する金沢八景駅では、ホームの位置が逆側にあるので、このままのレール位置だと狭軌用車両は金沢八景ではホームに接触してしまう恐れがあります。

そこで、六浦駅と金沢八景駅の間に狭軌用の三本目のレールの位置を逆側に切り替えるポイントを設置して、日本でここにしかない三線軌条渡りをおこなっているのです。

実物のポイントを見てもらった方が、わかりが早いです。奥方向が金沢八景、手前方向が六浦です。狭軌用の内側のレール位置が「渡り」のポイント前後で逆になっています。

ちなみに、六浦駅の反対側にはもう一度元に戻す「渡り」のポイントがあります。

図解すると、こういうことになっているのです。

上の2つの写真は図の2つの「P」に相当します。狭軌用車両が「P」で三線軌条を「渡る」ことによって、図で車両1,3の位置では上2本のレールに乗っていますが、車両2の位置では下2本に乗り換えるのです。これで金沢八景駅と六浦駅の両方でホームへの接触を回避している。

神武寺駅手前での分岐風景は、車上から見ると、こんなんです。左の複線2本が神武寺駅方面、右の1本がJRへの”わたり線”方面です。

なんか、新車両をこれだけ苦労して持ってきて、ここから巣立っていくんだと思うと、胸が熱くなりませんか。

・・・もっとも、この三線軌条渡り、新造の狭軌用車両がこの区間を走る特殊なシーンでのみ実働するものです。冷静に考えると、わたしたちが実際にその活躍の瞬間を目にすることはなかなか難しそうだというのが、やや残念ではあります。

※ここに至って、実はわたしにはひとつ疑問があります。
金沢八景・六浦間に「三線軌条渡り」がある理由(車両をホームから遠ざける)はわかりました。しかし六浦・神武寺間でもう一度元に戻す「渡り」は何のためにあるのでしょう? その先にはもうホーム接触の心配は無いのだから、わざわざ戻さずにそのままJR線方面に分岐していって良さそうなものです。誰か教えて!

今回の使用機材 K-3III、DA20-40、DA55-300PLM

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