「シグマのレンズは寒色系」は本当か?

世間でしばしば「シグマのレンズで撮ると寒色系の色合いになる」的な論評がしばしばされるじゃないですか。見聞きされたことありますよね?

わたしも何本かシグマ製レンズを使っていて、これまではそれほど強くは気に留めず、そういうものなのかとなんとなく聞き流していました。ところが先日標準ズームSIGMA17-70mm Contemporaryを入手して少し撮ってみて、「ん?」と思いました。

たしかに植物の写りがなんか違うなあ、蒼っぽいかなあ、と感じたのです。それと同時に、いやいやわからん、巷間そう言われてるから先入観として自分がそう感じてしまうだけかもしれないぞ、とも。

使用頻度が高くなりそうな17-70mm標準ズームなので、これは一度自分で試してみて、ほんとのところどうなのか、確かめてみたいと思ったわけです。

で、ここで前回の記事に話がつながるのですが、シグマ2本、ペンタックス純正2本の似た焦点距離のレンズを持ちだして、三脚据えて撮り比べてみました。そのうちの1本が新調したばかりのDA*16-50で、前回の記事では三脚もろともに新人紹介のネタになった、と。

では、今回の本題を早速。

SIGMA 17-70 48mm F8

SIGMA 50mmMACRO F8

PENTAX DA55-300 55mm F8

PENTAX HD DA*16-50 50mm F8

※各写真は「撮って出し」ではなく、RAWデータにAdobeのレンズプロファイルで補正をかけ、AdobeのK-3III用カメラプロファイル(今回は”Natural”)をあててRAW現像(使用ツールはART)するという、ほぼわたしのルーティンに沿った処理をしています。

50mm前後の焦点距離で同じF8で撮って4点比べてみて、どうでしょう?
同じ場所で同じ時刻に同じものを撮っているので、当たり前ですが、ぱっと見ではまず同じに見えます。そこから先でじっくり見比べてみると・・・。

以下は、4つのレンズの「色味」についてわたしの感じたことです。

1)シグマのレンズは「寒色」とは全く感じない。
これはもう、見たままそう思います。色味の違いは以下に述べるように確かにあると思うのですが、ちっとも「寒く」はない。少なくともわたしには。

2)「陽のあたった明るい葉の色」に濃淡の差を感じる。
風が吹いて手前の木のピントのあっている花の咲いた枝の位置が動いているので、光線の加減が微妙に4点で違う。したがって花と枝・葉の写りを同条件でしっかり比べることは難しいですが、それでも一番「濃い」DA*16-50といちばん「淡い」SIGMA50MACROの間にはしっかり違いがあるように見えます。

拡大して切り出したDA*16-50

同じくSIGMA50MACRO

これだと、光線の反射角度の違い・わずかな露出の違いと区別して語るのが難しそうなので、もうひとつ

3)右のビルの壁の色に濃淡の違いを感じる。いや「濃淡」なのかこれ?

壁なら光線の角度はほぼ一定のはず。あいにく後ボケしている壁なのでピントは全くあっていないのですが、それでも色味の違いはわりとはっきり判ります。最も「濃い色」に見える壁から最も「淡い色」の壁まで順番に4点並べてみます。
DA*16-50 50mm

DA55-300 55mm

SIGMA17-70 48mm

SIGMA50 MACRO

ここでも純正のレンズよりシグマのレンズの方が「淡い」色になっていると感じます。手持ちの数少ないレンズで、しかもプアな試写の結果だけからモノ申す荒っぽさを承知で言えば、やはりシグマのレンズには独特の色の出方がある、と考えるのは間違ってなさそうな気がします。
ただ「淡い」と書いてしまいましたが、これほんとうに淡いという言い方で的を得てるか?

このシグマ独特の色味を、どう表現しましょうか。
「淡い」はなんか違う気がしますが、かと言って世間でいうような「寒色系」とか「蒼い」というのでもないと思います。

熟考した上で、その割に雑なことを言いますが、わたし的には、色味が青く変わったりするのではなく「白い背景に透ける透明度」を何%か高めたような「透明度増し」という感じがいちばんしっくりくるのですが、いかがでしょう?。その時のホワイトバランスで「白」とされるボードが背景に入っていて、わずかに透ける感じ。「白い」とも「淡い」ともちょっと違う・・・「薄い」に近いかな。でも薄いと言うと色乗りが悪いみたいなニュアンスも混ざってくるから本意ではないなあ・・・。

いや、やっぱりわたしの内なる言語としてはシグマレンズは透明度5~10%増しでいきたいと思います。だからペンタックス純正のレンズと同じ色味を期待して仕上がりを見ると「なんとなく透かされた」ような感じがする。でも綺麗な透かされ方で嫌いではないんですよ、うん。

しょうもない自分勝手な実験でしたが、シグマレンズの色味について自分なりの言語化ができて、かなりすっきりしました。
すっきりしても、もうシグマの新しいレンズがKマウントのラインアップに並ぶことは無いんでしたね。なんとも残念。

使用した機材:K-3III, レンズ4点は上記。

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