十四景 日暮里寺院の林泉

歌川広重 名所江戸百景の十四景 日暮里(ひぐらしのさと)寺院の林泉、元の絵はこちらです。


道灌山の上からの景色が素晴らしくて、眺めていると日の暮れるのを忘れて見入ってしまうほどだということで、このあたりは日暮しの里と呼ばれたのだそうです。それで後年になって新堀という地名に日暮里という字を当てて「にっぽり」と読ませることになったのだという話を聞きかじったことがあります(出来過ぎているので、疑い深い私は本当なのかどうか内心ちょっとだけ疑っていますが)。

元の絵は、名所と呼ばれるにふさわしい景観を作ろうということで山裾にあるいくつかの寺院が競って作った見事な庭(林泉)の眺めだそうですが、残念ながらそれらは現存しません。わたしは仕方なく日暮里公園の風景を撮って無理やり林泉に見立て、お茶を濁すことにしました。


うーん、甘めの自己採点でも100点満点で3点くらいの「見立て」ですね。せめて絵にあるような枝垂れ桜の1本でも咲いててくれれば良かったのですが、そううまくはいかなかったのでした。

とはいえ、この日暮里公園は間違いなく元の絵の現地に限りなく近い場所ではあるのです。小さいながらも落ち着いた公園は、現在の西日暮里駅のすぐ脇の、むかしは道灌山と呼ばれた小高い丘の上に位置しています。下の写真は隣接する小学校の校門から丘の南西方向を向いて撮ったもので・・・


まず、なるほどここは”山の上”なのだな、と地形がわかるということがあって、

次に、学校の敷地の右にわずかに見えている屋根の先にある墓地に注目。こちらは地図で見る限りお寺で、江戸時代にこの地で見事な林泉を作って競った著名寺院と同名の青雲寺さんだと思われます。

入り組んだ住宅街のどこからどう回り込めばよいのか判然としなかったので、今回はお寺自体は訪ねませんでした。それはともかくとして、この荒川区立第一日暮里小学校の場所が、ひょっとするとかつては水を引き込んだ池と築山、その周りに名木や巨岩を配した見事な庭園だったのかもしれないと夢想してみるのも、また一興ではないでしょうか。

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