会津・裏磐梯 高原散歩(2)

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会津・裏磐梯の避暑地としての魅力の源泉は、標高800メートルの冷涼な高原に、無数の美しい湖沼を湛えた豊かな森林が拡がるその自然条件にあることは間違いありません。

森から吹く風が涼しく、良い香りがします。風に吹かれてボーっとベンチに座っているだけで、何時間でも気持ち良く過ごしていられます。

それに加えて、毎年のように足を運んでいる私から見て、この地には次のような美点があると思います。

1 会津の料理は良い。中でも××××を食べるために毎年来ているといっても過言ではない(名物化を恐れて伏せ字にするくらいの好物)
2 日本酒が旨い。各酒蔵の最上級ではない手頃な酒がしっかり旨くて、嬉しい
3 土地の人や風物に、素朴な東北の魅力が失われていない
4 にもかかわらず、残念な田舎臭さや俗化とは無縁でけっこう垢抜けている
5 時間距離で考えると、東京から意外なほど近い。
6 この魅力が世界にまだ浸透していないため、適度に空いている

たとえば、裏磐梯高原の入口に、瀟洒な構えで立つ諸橋近代美術館。

サルバトーレ・ダリのコレクションが充実していることで有名ですが、毎年の企画展も趣向が凝らされています。一般的な「観光地の美術館」の水準を明らかに超えた存在。
一流の美術品を堪能し、池と流水をあしらった建物を愛でながら、併設のカフェで優雅にお茶でもすれば、大人の遊び場として言うことなし。

ドライブがてらに休憩で立ち寄る、”ちょっと気が利いた店”もたくさんあります。観光ガイドの記事再録をする意図ではないので固有名詞は伏せますが、たとえば、最近見つけた別荘地の真ん中にあるピザ屋さん。

注文を聞いてから小さな厨房と窯で1枚づつ焼き上げるスタイルで、ピザを頼んでから品物が出てくるまでにちょっと時間がかかるのですが、森に向かって大きく開いた窓の外をゆったり眺めていると、待ち時間もさほど気になりません。

窓際に2組のカップルが並んでいたので、最初、この店はわりと若者向けなのかな、と思いましたが、若いカップルと入れ替わりに老夫婦が入店してきました。ご夫婦は「この間テレビでやってたあのカレーをちょうだい」と注文していて、なるほどテレビ取材を受けるようなアクティブなお店なのか。きっといろんなタイプのお客さんが来るんだな、と印象を修正。

丁寧で控え目な接客も、料理の味も、共に取材倒れではなく、メキシカンピザ(東北地方でエスニックな味は貴重)と、桃のサラダ(高級品種”あかつき”をフルーツサラダにする贅沢)が殊に美味しかったです。

「調理の効率」とか「来店客の回転率」とか「グッズ売って粗利益向上」とかいうギスギスした感じが微塵もなく、静かで、美味で、清潔で、一生懸命やっている感じが伝わってくる、応援したくなるお店です。

ちょっと気分を変えて歩きたいなと思ったら、ほんの数分クルマを転がして、柳沼あたりで水辺の散歩を楽しむのはいかがでしょう。

柳沼は五色沼ハイキングコースの西端ですが、街道のバス停にほど近い物産店の軒先すぐのところで既にこの絶景。ここからハイキングに出掛けるのも良し、留まって気持ち良い風に吹かれながらお土産を品定めするのも、また良し。

もちろん、お天気さえ良ければ、神秘の五色沼は一度は訪れてみていただきたい。1時間あまりの時間を要しますが、けして後悔はしません。

五色沼を歩いて、万一小腹が空いても心配ご無用。たとえば、気に入って毎年通っている曽原通りのパン屋さん。

私のような観光途中に立ち寄る一般客のほか、別荘滞在中の家族連れや、民宿・ペンションの仕入れ、純粋に近所からパンを買いに来る人など、多くの来店客でいつも賑わっています。

広めのイートインは、囲炉裏や一枚板の大きなテーブルと温かみのある木製調度で設えられ、窓からは磐梯山が望めます。パンと飲み物をいただきながら聞こえてくるのは、お店の人と常連さんとの気の置けない会話。

朝仕込んで焼くパンは、はあ午前中には売り切れっちまうんだ、とか。今日はまだ来ねえな、と思ったから食パンとっといたよ、とか。そいえばお母さんいくつになったっけ、とか。明日はうち休みだからね、大丈夫だよね、とか。(できればここ、当地のイントネーションで読んでほしい 笑)温かくて肩の力が抜けていて、それでいてムダなく、ベタベタせず、てきぱき。

焼き立てパンと地元の牛乳の味、山の眺め、森の風通し、人のリズム、全てが心地良いです。

こうして美術館を観て、森の風に吹かれて、美味しいパンやお茶を楽しんでると、あっという間に避暑地の1日は終わります。
山の日はつるべ落とし、と言いますが、空の色が青からだんだんと変わってきたかな、と思ったら、たいてい夕焼けを待つことなく、いきなり日没です。

私の印象では、当地はあまり茜色の夕焼け空には恵まれず、代わりに夕景を彩るのは、磐梯山の山肌の残照です。残念ながら今回は諸般の事情で、その残照を撮り損ないましたが、なに、来年か再来年に再挑戦すれば良いのです(爆。

というわけで、裏磐梯の魅力について僭越ながら少し語ってしまいました。写真も記事も、お目汚しのほどご容赦を。

裏磐梯散歩、もう少し続きます。

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