歌川広重「名所江戸百景」の五十四景は 浅草川大川端宮戸川、元の絵はこちらです。
絵の題名の3つの川の名はいずれも隅田川の別称。江戸時代は両国あたりから下流を大川と呼び、浅草近辺では浅草川、宮戸川という言い方もしたようです。川を渡る国道14号(通称千葉街道)の両国橋の東詰あたりから上流方向を眺めた絵ということで、現地で撮ってきた写真がこちら。
原題は、ここから見える川をどう呼んでも構わない、どう呼ぼうが川の眺めが美しいことに変わりはないからね、というような意味でしょうか。
元の絵に描かれたのはたぶん蔵前橋ですが、現代の景色としては、手前のJR総武線鉄橋のトラスばかりが目立ってしまって橋桁の下から見えている蔵前橋の方は肩身が狭そうにしています。また、広重画伯が好んで描く筑波山はもちろんここから見えるはずもなく、代わりと言ってはなんですがスカイツリーが川の左岸で存在感を放っています。
絵の左手前に大きく描かれているのは、このあたりが町民が大山詣りに出立する前に禊の水浴をする場所だったことに関係しているのか、梵天と呼ばれる魔除けの飾り物だそうです。もちろん現地に都合よく落ちているはずもないので、船舶係留用のポールを無理やり借景して使いましたが、無い方がマシだったかどうか微妙なところです。あと、この日この時は隅田川上に船影が全くなかったのもちょっと惜しかった。
撮影現地は両国橋のたもとでおあつらえ向きに川岸風景が眺められる形に整備されていて、おおいに助かりました。西方から合流する神田川の河口にかかる柳橋の上から現地・両国橋方向を眺めると、こんな様子です。
↑の写真で屋形船が見えていますね。この界隈は隅田川下流域にいくつかある(現代の)船宿の集積地のひとつで、神田川の河口一帯が屋形船や釣り船の船溜まりになっています。
この中の1,2艘でよいから川に出ていてくれれば絵の恰好がついたのですが・・・贅沢は言わないことにしておきましょう。