PENTAXの一眼レフには機種によりますが「プログラムライン設定」というチューンアップ項目があって、Pモードでカメラが露出を自動的に決める際に、絞りとシャッター速度(およびISO感度)をデフォルトでどのように組み合わせるかタイプ設定をすることができます。
選択肢は6通りで、取扱説明書ではそれぞれ
AUTO:カメラが適切な設定を判断
ノーマル(標準):基本のプログラム自動露出
高速優先:高速シャッターを優先
深度優先(深い):被写界深度を深くする
深度優先(浅い):被写界深度を浅くする
MTF優先:使用レンズの最良の絞り地を優先
と説明されていますが、いまひとつよくわかりません。よくわからないけどあまり使わないモードだし、ま、いいかとこれまではスルーしてきました。
しかし、K-3IIIでちゃんとしたハイパーP/Mモード使いになることを志しているわたしとしては、わからないままでは済ませておけません。というわけで、実際に撮ってどんな露出設定になるか、見てみることにしました。
テスト機材は PENTAX K-3III + smc FA77mm F1.8です。
AUTO&ノーマル
F3.5 SS1/400 ISO200
高速優先
F2.5 SS1/1000 ISO400
深度優先(深い)
F14 SS1/125 ISO1250
深度優先(浅い)
F2.5 SS1/500 ISO200
MTF優先
F5.6 SS1/125 ISO200
①AUTOと②ノーマル でまったく同じ結果になったので、6通りのテストですが写真は1点省略して5点しか掲載していません。それから、言い忘れましたがこのテストではISO感度はひとまずAUTO設定(範囲はISO100~4000)です。
当たり前ですが、被写界深度が違うと写真はずいぶん違って見えますね。「動く被写体」ではないから高速シャッターの効き目はわかりませんが。ともあれ、結果一覧は↓の通り。
絞り | シャッター 速度(秒) |
ISO感度 | |
AUTO/標準 | F3.5 | 1/400 | 200 |
高速優先 | F2.5 | 1/1000 | 400 |
深度優先(深い) | F14 | 1/125 | 1250 |
深度優先(浅い) | F2.5 | 1/500 | 200 |
MTF | F5.6 | 1/125 | 200 |
この挙動から、このカメラの自動露出設定ロジックについて素人なりに次のように考えました。
深度優先:(深い)ではF14、(浅い)ではF2.5と、レンズの絞り性能めいっぱいよりも内輪に限度設定されてます。限度にセットされた絞りで適正露出を実現するために、まずSSができるだけ動いて、足りない分をISO感度で調整しているように見えます。(深い)では焦点距離77mm(換算115mm)のレンズでSS1/125秒を下限と判定しているようで、F14 SS1/125で適正露出を得るためにISOは1250まで上がりました。(浅い)ではF2.5 SS1/500 ISO200で適正露出となったようです。ISO感度も低感度めいっぱいの100には下がらす内輪で200を下限に動いているのかな。
高速優先:この時は高速シャッターは1/1000に設定されました。このシャッター速度で適正露出を得るために、まず絞りが限度F2.5まで動いて、足りない分をISO感度で調整している(400まで上がる)ように見えます。高速の基準が常に1/1000なのかどうか、まだよくわかりませんが。
AUTO/ノーマル:何がどうオートでノーマルなのか、よくわからなかったです。
MTF:要はこのレンズはF5.6が光学的にベストの性能だよ、ということなのでしょうね。
ここまでは、ISO AUTOで撮ったテストでした。続いて、別の場所でISO感度を400に固定して撮ってみた結果についても、数値だけ掲載しておきます。
絞り | シャッター速度(秒) | |
AUTO/標準 | F4.5 | 1/500 |
高速優先 | F2.5 | 1/1600 |
深度優先(深い) | F9 | 1/125 |
深度優先(浅い) | F2.5 | 1/1250 |
MTF | F5.6 | 1/250 |
ISOが固定されてしまうと、単にF値とSSで綱引きをするだけの表になってしまいますね。
それでもここから、適正露出にするためにシャッター速度1/1000以上が必要な場合は当たり前に1/1600や1/1250なんていう動き方をしていることがわかるし、深度を得るために絞りたいけどSSやISOの制約で適正露出が得られなくなってしまう場合には、F14まで絞らずにさりげなくF9で妥協してる、なんていうことが読み取れて、わたしは
カメラの自動露出って、頭いいなあ。
という頭の悪そうな感想を持ちました。はい。
さて、プログラムライン設定の各項目の挙動が少しわかってきたたところで、Pモード修行を始めようとしているわたしのK-3IIIの設定はどうしましょうか。
しばらく「深度優先(深い)」をデフォルト設定にして撮り歩いてみようかな、と思い始めています。読んだ本のタイトルを忘れましたが目いっぱい絞って手前から奥までしっかりピントを合わせるのを「物語を撮る」露出と呼んだ先生がいらっしゃいました。「なんとなく撮ってあとから見たらF5.6でSS1/125でした。こんなもんすかね?」みたいないままでの軽率な撮り方の対極になるので、自分に向くにせよ向かないにせよ、いろんな発見があるのではないか、と。
このつづきは、いずれまた。