マルスを見に上野まで

コロナ禍が一段落して(したことになって)、最近わりとあちこち出張に行く機会が増えつつあります。九州、関西、東海、東北・・・仕事じゃないけど先日甲府にも行ったし。で、九州くらい遠いと飛行機を使いますが、基本は列車移動で行く事が多いわけです。

今はインターネットでわりと簡単に新幹線や在来線特急の指定席予約ができるし、紙の切符を発券しないでICカードやスマホで「ピッ」と乗っちゃうことも増えて、切符を買うために駅の窓口に並ぶことは少なくなりました。立川志の輔師匠の名作落語ネタ「みどりの窓口」もだんだん通用しなくなっていくのかも。それはそれで寂しくはありますね。

などと鼻毛抜きつつボーっと考えているうちに、ふと気になったのです。まだコンピュータシステムが無い時代、むかしの国鉄の指定席の切符はどうやって売っていたのだろう?

グーグル先生にお伺いをたててみると、どうやらこういう物凄いことをやってたらしいということがわかってきました。

インターネットがない時代は電話での旅行の予約のシステムをアナログでどのように設計していたのですか?データベースやトランザクションなど。 - Quora
データベースは紙の予約台帳、ネットワークは音声電話、処理するのは人間でした!紙の台帳が予約データベースで、人間様が台帳を見て予約の有無を判断し、販売する場合は書き込んでいたんです。旅行全般の話はあまりにも壮大なので、国鉄のオンライン座席予約システム「MARS 1」(マ...

紙の台帳と電話と人力検索・・・昔の人は偉かった。健気だな、まじめだな。

で、さすがにこれでは仕組みとして限界がくるので、初めてここにコンピュータが導入されたのが1960年2月、有名なマルス(MARS)システムの稼働ということになるのだそうです。このあたりの歴史、いろんな博物館で展示説明の対象になっているらしいということがわかって、ようやく今回記事のタイトルに至ります。

思い立ったが吉日というやつで、さっそく上野の国立科学博物館まで行って、マルスシステムの展示を見学してきました。
地球館(新館)2階 「電子計算機」の展示の一角がこんな風になってます。

「マルス予約端末を操作する”みどりの窓口”の職員さん」の図、です。ちなみに後ろの「むかしのコンピュータ」たちは別の展示説明と混ざっているので「イメージ映像」という見方をした方がよさそうです。

これだけだとふーん、と言って終わりになりそうですが、この展示の萌えポイントは職員さんの影に隠れているこれです。

後ろの机に置かれている補助入力装置。無骨な機械装置の上方にハンコ状のブロックを差し込むスロットが空いています。

拡大して良く見るとスロットは3つあって、「列車」「乗車駅」「降車駅」。左脇にはこの端末で扱う列車名(ひかり307とか、ひたち2とか)を表すブロックが入った箱が並んでいて、展示では省略されてるようだけど推察するにこの他に乗降駅名(東京とか新大阪とか)を表すブロックも別にあったに違いありません。担当職員さんはたぶん日付だけ手元で操作して、あとはこの3つのブロックを素早く装置に差し込むと、空席情報が端末に返って来るんでしょう。で、「はい、空いてますよ」とか言って予約入力するんですよ。きっとそうです。

この入力I/F、めちゃめちゃエモくないですか。

スロットの右下にあるレバーはなんでしょうね? これは似たものを見たことがあって、昔のポップアップ式のトースターに、こんな形状のパンを強制的に取り出すレバーが付いてたじゃないですか。きっと、差し込んだブロックを取り換えるのにいちいち引っこ抜いてると時間も手間もかかって大変だから、トースターと同じように、こいつをグッと押し下げると差し込んだ3つがいっぺんに浮いて取り外せるようになる、そのためのレバーですよ。この推理は結構自信ありますけど、どうだろう?

ああ、萌えるわー、昭和のマシン。

このマルスシステムは日立製作所によるもののだそうですが、国鉄は当時コンピュータというものをそれほど信頼しておらずおっかなびっくりの導入だったようです。試してみたら「思いのほかうまくいった」ので、あわてて導入範囲を拡大することになったという話も聞きました。博物館の展示では東海道新幹線全列車のほかいくつかの在来線特急も扱っているようなので、かなり導入が進んだ後の端末操作風景ということになりますね。

京都の鉄道博物館に行くと、この後大きく発展したマルスシステムを観ることができる(あのパタパタさせてピンを差す端末とか!)ということを知り、新たな野望を胸に秘めるわたしです。

Hepporon Library | 京都鉄道博物館へ行く ~その9~ マルス端末に萌える
京都鉄道博物館へ行く その8からのつづき 本館の展示品で個人的に一番萌えたのは、国鉄時代に開発された指定席予約システムのマルス。 特にこのマルスM型発券機は、子どもの頃、大阪駅のみ...

さて、マルスの話題はこれくらいにして、
せっかくの国立科学博物館(実はわたし、生まれて初めてです)なので、これ以外にもいろいろ見学してきました。その模様は次回。

タイトルとURLをコピーしました