妖精美術館と斎藤清美術館

もともと今回の会津地方遠征については、南から台風が北上するタイミングと重なっていたので天候には恵まれませんでした。

結果的には雨が上がっている時間帯、晴れ間の見える時間帯もありましたが、それでもおおむね雨に降られているといってよい道中で、本数の少ない只見線を撮る合間のアイドルタイムを、雨の中で観光客としてどう有意義に使うかは悩みどころです。

わたしは今回は2箇所の美術館を巡って楽しむことにしました。まずはこちら。

人形創作家の若月まり子さんによる、妖精をテーマにした見事なビスクドールは沼沢湖の湖畔に建つ妖精美術館に展示されています。

館内の若月作品をもう1点、こちらは同じ妖精でもシェイクスピア「夏の世の夢」の妖精ロビン・グッドフェロー(妖精パック)をイメージしたものだそうです。

この美術館の展示物の中心は、英文学者で妖精学の第一人者、井村君江さんのコレクションを中心に妖精に関する絵画や資料ですが、文学としてのファンタジー(妖精物語)の世界に縁遠い私は、つい若月さんのビスクドールや、天野喜孝さん作のステンドグラスの方に目を惹かれます。

素人目に一番「天野喜孝っぽく」思えた、上から2枚めのガラス窓を拡大しておきます。実に美しい。ちなみにこの絵柄でわかるかもしれませんが作品の題材は「夏の世の夢」です。

主展示室の全景はこんな感じ。こじんまりとして落ち着いた館内です。

せっかくの収蔵展示なので、井村君江さんの入門書でも読んで勉強しておけばもう少し有難みがわかったかと、プチ後悔しました。

少し趣の違うこんな展示も。”妖精物語の時代”の文物という感じ。

妖精の世界はなかなか魅力的ですが、展示にしたがえば「妖精の国への行き方」は

白馬などの特別な乗り物に乗る
杖やリンゴの枝を使う
妖精の王の案内
妖精に誘拐される
フェアリー・リングに入る
丘が開き吸い込まれる

などの手段が必要だそうです。わたしにはちょっと難易度が高いかなと思いますので、今のところ妖精美術館で我慢しておいた方がよさそうです。

完全に撮影自由、という太っ腹なレギュレーションが素敵で、入館料も安いし、静かで清潔で優雅な妖精の館です。只見川沿いから車で急坂を登る必要がありますが、鉄道撮影遊びの合間に一息入れて落ち着くには良い場所だと思います。

もう一箇所は、会津柳津駅に近い斎藤清美術館です。

斎藤清さん(1907-1997)は会津出身で世界的に活躍された版画家です。当館は収蔵作品の質がワールドクラスなだけでなく、施設デザインや展示の演出が非常に洗練されていて、久しぶりに使う形容詞ですがなんとも「ハイブラウ」です。失礼ながら地方の小さな公営美術館でここまでのことをやられているとは、と驚きました。

作品集は書店でも買えますが、たぶん当館でしか買えないポストカードも気が利いていて素敵です。おひざ元だけあって非常に多くの作品のポストカードが用意されていて「よりどり6点で1000円」はかなりお買い得だと思いましたね。

館内はカメラでの撮影ができず、せめて外観写真だけでもと思ったのですが、あいにく土砂降りの時に訪ねたので写真が1点も残せません(残念!)でした。文字面だけでの紹介で、悪しからず。

斎藤清美術館の隣に並んで道の駅 会津柳津の物販・飲食施設があり、買い物や休憩にも便利です。都会的でハイブラウな美術館と、民俗的で大衆目線の道の駅のギャップを楽しむのも、また一興です。

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