霧幻鉄道 只見線を300日撮る男

報告が2週間ほど遅れましたが、7月末に東京で公開された表題の映画を見てきました。

星賢孝(ほし けんこう)さんの名前は、日本で鉄道風景写真を撮るか観るかする趣味のある人ならば一度ならず耳にしているのではないでしょうか。奥会津を本拠として活動する、というか只見線の写真だけを30年300日撮り続ける壮絶な創作活動を続けておられる写真家で、映画はこの人の活動に密着するドキュメンタリー作品です。

星先生は出身地である奥会津・只見川流域の自然風景とローカル鉄道只見線が織り成す絶景を愛し、これこそ過疎と経済停滞に悩む地元を救う唯一最大の資源=観光資源であると信じて、地元から日本中・世界中に写真を発信しその魅力を訴え続けてこられました。

2011年の豪雨による土砂災害で只見線が多くの橋脚や線路を失い、ご本人も「さすがにこれで只見線も終わったと思った」と映画の中で述懐されているような危機的状況になりました。しかし、諦めることなく路線の復活・存続を賭けて自ら国内外観光誘致の活動の先頭に立って活動し、只見ファンの多い台湾まで乗り込んで只見線写真コンテストを成功させるなど、信じがたいバイタリティーを発揮して地元を鼓舞して来ました。映画の描写は四季折々の美しい鉄道風景をふんだんに交えて静かで淡々としてさえいますが、映像から伝わってくる星先生と地元の方々の熱量はなかなかに高い。

とにかくね、機会があったら、みなさま映画を見てください。只見線を知っている人も、知らない人も、日本でいや世界で指折りの美しい風景を堪能できるだけでも損はしません。写真家・星賢孝さんの心意気に触れ、地元の人・只見線を応援する人のピュアな情熱を感じたら、もうあなたは只見線応援団の大きな環の中に入っていることでしょう、わたしと同じように。

星先生や安孫子監督が登壇される舞台挨拶の日にたまたま観に行くことができたので、こんな写真を撮ってくる幸運に恵まれました。
左から安孫子監督、音楽の山形由美さん、星先生、ナレーターの山本東さん、音楽PのDAIJIさんです。

わたしは不明にして存じませんでしたが、この映画の劇伴で圧巻のフルート演奏をしておられる山形由美さんは、その道ではたいへん高名な音楽家なのだそうです。録音スタジオがとても狭くて、こんなところに山形さんが来てくださるかどうか、とスタッフが気を揉んだという裏話は面白かった。「フルートは横に構えるので大変でしたがぎりぎり大丈夫でしたね」と笑う山形さんも素敵でした。素晴らしいドキュメンタリーシナリオ・映像に加えて、音楽の角度からも、ご興味ある方は、是非。

そして今秋10月1日、星先生はじめ多くの人たちの願いと努力が実って、只見線は被災を乗り越えて11年ぶりに全線再開通します。しかし現実は厳しい。多くのローカル線と同様に大きな経営赤字という問題は未解決のままで、沿線自治体には重い負担がのしかかってきます。舞台挨拶で安孫子監督が「廃線の危機は去っていない、再開通するこれからが勝負。」と強調しておられました。うむ。

わたし的には、奥会津を再訪し只見線を撮って乗って応援するぞ、という決意を固くした映画鑑賞となりました。

使用した機材:FUJIFILM XF10

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