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昨秋、フィルム写真時代の一眼レフカメラとレンズを、縁あって譲り受けました。
カメラはASAHI PENTAX SP、レンズはAuto Takumar F1.8/55。
このカメラ、当時の国際標準規格だったM42マウント+TTL絞り込み測光の搭載で、付けるレンズを選ばず、露出計を使わずに測光できる画期的な製品でした。
当然というか、売れに売れました。1964年に発売され世界中で180万台売れた、旭光学の空前絶後のベストセラー機です。私の手元にあるこれは、一眼レフカメラを市民の身近なものにした、20世紀の日本精密機械産業の金字塔なのです。
巨匠カラヤンとベルリンフィルハーモニーオーケストラが1966年に来日した時に、帝国ホテルに宿泊していたオケのメンバーが大挙して銀座のカメラ屋にやってきて、ASAHI PENTAX SPを95台買って帰った、という話を最近読みました。当時の人気ぶりを物語るエピソードです。
そしてこのSP、当たり前ですが、我が愛機PENTAX K-70の直系のご先祖(笑)です。
入手以来、これまでタクマ―レンズをK-70で使うことにかまけていましたが、今回はご先祖のカメラの方、昭和の名機を再活用することを考えてみましょう。
ご先祖様とはいえカメラは道具ですから、仕舞い込まれるより、使われた方がきっと幸せに違いありません。
【第一関門 清掃・機械部分点検】
以前に使われていた方が丁寧に扱われていたのでしょう、少々古びて、接合部など少々傷んだ様子の部位もありますが、総じて大きな傷やヒビ、錆びなどははありません。ミラーとファインダーを含めて汚れていたところを丁寧に拭いてやると、十分使える感じになってきました。
うーん、もうちょっと綺麗にした方がいいかな(笑)。
フィルムを収めて巻き取る機構にも、シャッター機構にも、何の問題も無い感じです。50年以上前のメカですよ。この頃の日本の工業製品の品質って、ほんとに凄いですね。第一関門クリアです。
(シャッターが表示速度通り動いてるか、など「写真撮って現像してみないと わからない」部分はもちろんありますが・・・)
【第二関門 電池・露出計】
SPのウリはTTL測光ですから、なんとしても内蔵露出計を復活させたい。新しい電池を入れて、露出計が動くかどうかが第2関門です。
このカメラにぴったり合う電池はもう販売されていませんが、LR41ボタン電池で代用することができます。ただし、SPの電池スペースに収めるにはLR41の径は小さすぎるので、なにか空きスペースを埋めるアダプタが必要です。
PENTAX機に限らず、旧いフィルム時代のカメラで現代のボタン電池を使うためのサイズ合わせのアダプタが数千円で市販されていますが、それとは別に、私は某所で耳寄りな代用品情報を聞きこみました。
こちらの水道用パッキンがアダプタ代わりに使えるらしいです。”PP40 12×8” という規格・サイズならどのメーカーのものでもOKのようです。80円〜150円くらいで手に入ります。
購入して取り付けてみました。サイズ感バッチリです。
で、SPのスイッチオン。露出計の針が動きました! まだ生きてた!第二関門クリアです。
【第三関門 カメラ操作】
笑ってはいけません。私、フィルムカメラを触るのはたぶん15年ぶり。フィルム一眼レフを触るのはほとんど初めてです。
画期的なTTL絞り込み測光、とか上段で書いてますが、実際には、装填したフィルムに合わせてISO感度目盛りをセットし、カメラ構えて、構図決めて、絞りを決めて、最後にファインダーの中の露出計の針の動きを確かめながらSSのダイヤルを回して、やっとレリーズ。そんな複雑なことがスムーズにできる自信は全くなし。いや、絞りとSSとどっちが先なんだ? どっちもできなきゃいかんのか、そうか・・・高まる不安。
だいいち、オレ、フィルムの装填ちゃんとできるのかな。
第三関門が一番の難関です(笑)。
これは実際に撮りに出掛けないとクリアできるかどうか、わからない。
というわけで、次回はSPでドキドキの撮影ということになります。