歌川広重「名所江戸百景」の四十景は せき口上水端はせお庵椿やま。元の絵はこちらです。
絵の題名がとっつきにくいですが、”せき口上水端”は、今の文京区関口付近、神田上水(神田川)にあった取水口堰のあたり、という意味。というか堰があったから「関口」になったのかもしれませんね。次の”はせお庵”はこのあたりに松尾芭蕉が居を構えていた(ばしょう→ばせお)ことから来ていて、最後の”椿やま”は椿が多く自生していたことからの通称で、明治期に山縣有朋がここに建てた「椿山荘」が、今は高級ホテルとなってその名を受け継いでいます。
神田川の流れが昔とたいして変わっていないとすれば、その形から見てたぶんこの辺だろうとあたりをつけて現代の風景を1枚。
江戸川橋から神田川岸を西方へ徒歩で数分進んだあたりです。都心を自動車で移動する習慣の人には、首都高早稲田ランプの出入口あたりと説明する方がわかりやすいかもしれません。
元の絵の牧歌的な田園風景は、今や文京区から新宿区にかけて、住宅と中層オフィスビルの密集する都心街区に姿を変えています。そして元の絵よりも桜風味がかなり強め。
このあたり神田川の両岸に見事な桜の並木が続いていて、この時ちょうど見頃。川面にいい感じに花が散り始めていました。
見物の人出もそこそこありましたが千鳥ヶ淵や上野などの超メジャースポットとは違ってゆったり歩けるので、「百景」撮りのついでに、気持ちの良い花見ができました。