夏の暑さが本格化してから1ヶ月以上は実質休業してしまっていますが、気候が落ち着いたら「名所江戸百景」写真散歩を再開しようと考えています。
そのための景気づけと勉強を兼ねて、ここはひとつ百景の「原本」を拝見しておこうじゃないかということで、折よく催されている展覧会を訪ねてきました。こちらです。
東京・立川市のたましん美術館。
地元金融機関の多摩信用金庫さんが本店ビルの1階フロアの一部を美術館として運営してくれていて、今回は「歌川広重 名所江戸百景」展が9月中旬まで開催されています。
台風一過で暑さがほんのわずか和らいだ(と思いたい)とある日、立川駅から徒歩数分の美術館を訪ねました。
館内は撮影NGなので、受付カウンター越しに美術館入口の様子を1枚だけご紹介。
整然かつこじんまりとしていて、利用しやすい印象でした。
※こじんまりしすぎていて人数が割けないのか、展示室内が完全放置になっていて撮影NGのはずがスマホでバシバシ撮っている剛の者が多数出現していたのには苦笑い。
ルールを守って展示内容が直接撮れない・紹介できないわたしとしては、パンフレットの表紙でも載せてお茶を濁すことにしておきます。
会場には広重の名所江戸百景のうち40点ほど展示されているほか、その他の浮世絵版画作品も若干ありました。たとえば葛飾北斎の富嶽三十六景も1点だけ展示。
どこかで誰かの役に立つという情報でもありませんが、感想を少し記しておきましょう
素人考えで、浮世絵版画というのは美術作品の中でもおそらく印刷物や記録画像による再現が比較的やりやすい方なのではないかと思っています。しかし実際に版画作品をナマでジカに見てみると、書籍やWEBで観るのとは次元が違う「作品が迫ってくる感じ」を受けました。観る者の心に印象を残す”鮮度”が違うと言えばいいのかなあ。
パンフレットの表紙にもなっている「亀戸梅屋舗」や「大はしあたけの夕立」などの超有名作品はもちろん大きなインパクトを心に残すのですが、それ以上にグワッと心を鷲掴みにされたのが「高輪うしまち」や「浅草田圃西酉の町詣」の様々な江戸暮らしリアリティの中での動物の愛らしさだったりします。
画力は言うに及ばず、題材(テーマ)の選び方にも歌川広重の天才を感じずにはいられません。
あと、展示物を見てにわか勉強した感想ですが、浮世絵版画で「広重」「北斎」「写楽」など絵師だけにスポットライトを当てすぎるのは鑑賞の仕方としては片手落ちかもしれません。版木を彫る技術、絵の具を載せて絵を摺る技術などがあってはじめて作品が成り立つので、名作を生み出すのは彫師や摺師、それに版元まで含めたチームで戦う団体戦の結果として観るべきではないかと思いました。
私の勝手な妄想ですが「〇〇さんが彫るなら存分に精細な絵を描いて大丈夫」とか「隣町からスカウトしてきた摺師が存外に頼りないので、今回はおぼろ月の表現はあきらめよう」みたいなチームワークの機微があったのではないかしらん。
ということで「名所江戸百景」のイメージをいっそう明確にできたので、今後の撮り歩きに活かせる・・・とさぞいいんだけど、果たしてどうなるでしょうか。
なによりもまず、残暑がもう少し和らいでくれないと活動再開も危ういぞ。