総司忌・・・所縁の場所を歩いてみた(2)

前回の記事からのつづきです。地下鉄の麻布十番駅から国立競技場前駅まで移動してきて、東京体育館の前から立体交差する外苑西通りを北上しているところです。手にしている機材は引き続きLUMIX S5と20-60ズーム。

このあたり、クルマで通り過ぎたことは何度もありますが歩いたことはあまり無いんですよね。こんなところに突然灯油や「炭」を売っている店があって意外。この日は閉まっていて、果たして現在営業されているお店なのかはわかりませんが。現役の販売店さんだとすると、どういう具合に炭の需要があるんだろう。

少し進んだところでこんな看板を発見。東京暮らしは結構長いですが、こういうの見たのは初めてですねえ。どこかの国の大使館や領事館がこの辺にあって、デモ隊とかが音量を上げてこの辺を通ることがありがちだったりするのかしら。

ちょっと興味が湧いたので、帰宅してから調べてみたのですが、この場所の近辺で「外国公館」って不思議と見当たりません。どこかの国の何かがこの近くに隠されているのか、外国公館と言う名目で実は別の何かに配慮しているのか・・・いやあまり詮索しない方が身のためかな。

話題を変えましょう。↑の信号に添えられた交差点名看板(正しくは「主要地点の案内標識」と言うらしいです)が示すように、ここで外苑西通りは新宿御苑に接しています。写真左側の木立が御苑のほぼ南端で、地図で確かめると園内のプラタナス並木やバラ園の先あたりのようですね。

もう少し進むとちゃんとした門扉が構えられていますが、締め切られていてここから出入りはできません。入場するためには、左にぐるっと回り込んで千駄ヶ谷門まで数分歩いた上で入場料を払っていただく必要があります。

いや新宿御苑の解説をしている場合ではない。何しにここに来たのか忘れるところでした。
外苑西通りの大京町交番交差点の近くに、新選組一番隊長・沖田総司逝去の地、と伝えられる場所があって、そこを訪ねてきたのです。

ありました、ここです。

鳥羽伏見の戦いで新選組を含む幕府軍は敗走し、沖田総司は近藤勇らと同じく江戸に逃げ延びました。病状は芳しく無く、第一線に復帰することも叶わないまま幕府お抱えの医師・松本良順の庇護を受けて、ここ千駄ヶ谷の池尻橋近くの植木屋のもとに匿われていたと言われています。

ここを逝去の地とするかどうかには諸説あるらしく、新宿区が設置したプレートにも「伝」と但し書きがありますが、心ある方々がこうして綺麗に紫陽花の花壇を作り、ちょうど総司忌の時期に美しい花の咲かせてくれているのを見ると、なんだか胸が熱くなりました。

総司は慕っていた近藤勇の死から2ヶ月、後を追うように病没(1868年)しました。近藤の死は知らされていなかったと言われています。享年24あるいは25とも。血で血を洗う激動の幕末を駆け抜けた若者がこの静かな地で迎えた最期は、せめて安らかなものであったことを願わずにはいられません。R.I.P.

朝から総司の生家、墓所、逝去の地と訪ね歩いて、柄にもなく静かな心境になったわたしがこの日最後に向かったのは、沖田総司が最も元気な時代、青春を育んでいたに違いないあの場所です。

いったん国立競技場前駅に引き返して、ふたたび地下鉄で移動します。

都営地下鉄大江戸線の牛込柳町駅で降りて地上に出ると、市ヶ谷柳町交差点。東西両側から坂道が降りてきていて、東京・新宿区のこのあたりは意外に起伏に富んだ地形のようです。

写真左手前の柳町病院さんの手前の角を曲がってすぐ、奥まった路地のつきあたりに小さな鳥居とお社の稲荷社を見つけました。ここが目的地。

ここに、江戸時代末期に近藤勇が宗主を務めた天然理心流・試衛館道場がありました。↓の写真右端に碑が建っていますね。

かつては近藤、沖田、土方ほか幾多の若者たちが熱い志を胸にここで切磋琢磨の日々を送っていたのです。しかし今日、梅雨の止み間のジリジリと暑い日差しを浴びて住宅街の真ん中に静かに佇む小さな稲荷社には、やがて幕末の京都を震撼させることになる新選組の面々が集った昔日を忍ばせるものは、何ひとつ残っていません。

↓の写真の左端の路地が、反対側からの試衛館跡への入り口です。ビルと低層の住宅に囲まれたこの一角は、左右どちらから回るにせよ、かなり情熱を持って捜し歩いていないと見落としてしまうに違いありません。

六本木、千駄ヶ谷、市ヶ谷柳町と沖田総司の足跡を半日で訪ね歩いて、改めて江戸も明治も遙かに遠いな、今歩いて当時の面影を探すのはなかなか大変だな、と思い知りました。一方それだけに、現代のわたしたちの気持ちがピタッとシンクロできる事柄を見つけた時の感慨は、いっそう深いな、とも。

今回の私の場合で言えば、「伝 逝去の地」の碑が満開の紫陽花に囲まれているのを見たとき、グッと来ました。150年近い時を隔てて、歴史の中の若武者に心を寄せる人たちの無垢の善意。なかなかに尊い。

写真という点では暑さで撮影に集中できにくく散漫なスナップ撮りばかりでしたが、総司忌をきっかけにしてそれなりに面白い週末の歴史散歩ができました。

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