谷中レトロカメラ店を見過ごしてた件

感想・批評

先日、半蔵門の日本カメラ博物館を訪ねましたが、今回はその”余波”とでも言うべきトピックです。

博物館のあるJCII(日本カメラ財団)一番町ビルには、宝島社が入居しています。そう、毎年発表されてミステリー小説愛好家たちの間で話題になる『このミステリーがすごい!』大賞、通称『このミス』で有名なあの出版社です。1993年に現社名になる前はJICC出版局という名前でしたが”大家さん”のJCIIと似ていて紛らわしいのは偶然だろうと思います、たぶん。

永世ビギナー写真愛好家を名乗るわたしとしてはまことに恥ずかしながら、博物館の存在を知って訪ねたのは今回初めてでしたし、お膝元?の宝島社からこんなミステリー作品が発売されているのも、その博物館の展示物をきっかけにして初めて知りました。

「谷中レトロカメラ店の謎日和」著・柊サナカ 宝島社文庫(『このミス』大賞シリーズ)2015年刊

昔は結構なミステリー読みだったので、毎年の『このミス』はけっこう気にしてましたし、その名を冠した文庫シリーズなら書店の店頭などで気が付いていて然るべきなのです。しかし、近年は小説を読むという趣味から離れていたので、正直まったくノーケアでした。

さっそく読みました。
本作は東京・谷中にある中古フィルムカメラ専門の写真機店を舞台にしたハートウォーミングな連作短編ミステリーで、私の知っている限りでは舞台設定や作品のテイストは(これも古くなりますが)「ビブリア古書堂の事件手帖」著・三上延を思い起こさせます。

未読の方の興を削がないように、作品の内容にはこれ以上あまり触れないでおこうと思いますが、写真好き・カメラ好きの方には読んでみることをお奨めしたい秀作だと思います。本書を含めて三冊が刊行・完結済みで、わたしは一気読みしてしまいました。

たまたま、ということになるのでしょうが、小説内で謎解きのキーアイテムとして登場する数々の歴史的名品カメラについて、宝島社と同居している日本カメラ博物館が著者にとって重要な取材情報源となっているそうです。2020年には小説とコラボレーションした博物館展示も行われたらしい。

カメラも写真も、谷中の街も好きだと公言しているくせに・・・まったく、なんでこれを見過ごしたかなあ、わたし。

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